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江戸園芸植物展示

一之江抹香亭では、江戸時代から続く伝統的な「江戸園芸植物」の展示を通じて、日本人の文化的な自然観を体験していただけます。これらの園芸植物に加え、古来より親しまれてきた「七草」やアジサイも展示しており、その美しさと歴史を紹介しています。

季節ごとに異なる展示内容では、春の桜草や夏のアサガオなどが来訪者を迎え、秋にはスズムシやコオロギといった虫の鳴き声が情緒を添えます。また、菊花展では、多彩な菊の美しさを楽しみながら、その育成技術と伝統文化を学ぶことができます。

 

これらの展示は、訪れる人々に四季折々の自然の美しさと江戸の園芸文化の魅力を感じていただける機会を提供しています。一之江抹香亭で、日本の豊かな園芸文化と自然の調和をぜひご体感ください。

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さくらそう展
(4月上旬~中旬) 

サクラソウは、北海道から九州にかけての高原や原野に広く分布し、林間の湿性地や原野の草地で生育する多年草です。4月から5月頃にかけて、高さ15~40cmほどの花茎をまっすぐに伸ばし、5~10個の可憐で美しい花を咲かせます。その姿は優美で、日本人の心を魅了し続けてきました。

江戸時代に、埼玉県の戸田ヶ原や東京都の浮間ヶ原に自生していたサクラソウを基に、本格的な栽培が始まりました。当時、園芸熱が高まっていた江戸では、多くの人々がこの花に魅せられました。幕末の頃には、愛好者たちの手によって、交配や選別が盛んに行われ、多種多様な品種が誕生しました。その結果、サクラソウは全国に広まり、数百に及ぶ品種が作出され、その中には色合いや花形が異なる個性的なものが数多く見られました。これらの品種は、江戸の園芸文化を象徴する存在として広く認知されました。

サクラソウは、単に美しいだけでなく、日本の文化や季節感を象徴する花です。特にその花は、薄いピンクから濃い紫、さらには白など、多彩な色合いを持ち、花弁の形状も品種によって異なります。花の中心部には「目」と呼ばれる部分があり、これが際立つことで花全体がさらに美しく見えることから、「美の象徴」として大切にされてきました。

 

一之江抹香亭では、ボランティアの皆さまの協力を得て、多種多様なサクラソウを丹精込めて栽培し、展示しています。訪れる方々は、この魅力的な花々を楽しみながら、江戸時代から受け継がれてきた園芸文化とその豊かな歴史に触れることができます。

さつき展
(5月中旬~6月上旬)

サツキは、日本を代表する常緑低木で、関東地方以西の本州から屋久島にかけて分布しています。日当たりの良い川沿いなどに自生し、生命力の強さと美しい花で知られています。その名前の通り、5月下旬から6月上旬にかけて花を咲かせ、他のツツジ類よりも1か月ほど遅れて開花するため、初夏の風物詩として親しまれています。

江戸時代中期には、ツツジブームが起こり、多くの園芸品種が作り出されました。この頃、4月から5月中旬に咲くものを「ツツジ」、5月下旬から6月上旬に咲くものを「サツキ」と区別するようになりました。サツキはツツジ類の中でも特に豊かな花色と多彩な形状を持ち、赤、紫、白をはじめとする鮮やかな色彩が庭や盆栽での人気を集めました。

その魅力は品種の多様性にあります。サツキには、花の形状や大きさ、模様などに個性があり、数十種類にのぼる品種が育てられています。一つひとつの品種には独特の美しさと個性があり、それぞれが庭や盆栽を彩ります。

一之江抹香亭では、地元のサツキ愛好家の皆さまが丹精込めて育てたサツキの盆栽を展示しています。その美しい姿には、愛好家の深い情熱と歴史の息づかいを感じることができます。初夏の訪れを告げるサツキの花々をぜひご覧いただき、日本の伝統的な園芸文化に触れてみてください。

あじさい展
(6月上旬~6月中旬)

アジサイは、日本の梅雨を象徴する花として古くから親しまれてきました。その文献上の初出は「万葉集」とされ、2首の歌に詠まれています。万葉集では、アジサイがその美しさと多様な花色で、人々の心に深く刻まれていたことがうかがえます。
「言問はぬ 木すら味狭藍 諸弟(もろと)らが 練の村戸(むらと)に あざむかえけり」
「安治佐為の 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ」

江戸時代になると、アジサイはさらに多くの人々に愛されるようになりました。尾形光琳や俵屋宗達、酒井抱一などの画家たちがその花を題材にし、屏風や絵巻に描くことで、その美しさを後世に伝えました。また、日本初の園芸書とされる『花壇網目』(1664)や『花壇地錦抄』(1696)にもアジサイが紹介され、園芸植物としての地位を確立しました。

アジサイは、梅雨の時期に花を咲かせる貴重な植物として、庭木や切り花として重宝されてきました。その花色は、土壌の酸性度により青や紫、ピンクなどに変化するため、多彩な美しさを楽しむことができます。さらに、品種によって花の形や咲き方も異なり、趣のある庭づくりに最適です。

一之江抹香亭では、梅雨の時期を彩るアジサイの展示を通じて、その多様な品種や美しさを楽しんでいただけます。訪れる方は、色とりどりのアジサイを眺めながら、日本の四季と文化の深いつながりを感じることができるでしょう。歴史に触れながら、梅雨の憂鬱な日々を鮮やかに彩るアジサイの世界をお楽しみください。

あさがお展
(8月中旬~8月下旬)

アサガオは、日本において古くから親しまれている植物で、その到来は奈良時代にさかのぼります。遣唐使が薬用植物として中国から持ち帰ったのが始まりとされ、当初は薬効を期待される存在でした。その後、江戸時代に入ると、アサガオは観賞用植物としての人気を集め、品種改良が大きく進みました。

江戸時代には、花形や色彩の変化を楽しむ「変化朝顔」と呼ばれる品種が登場しました。これらは、八重咲きや花弁が細かく裂けたもの、花弁が反り返るものなど、自然の中では見られない個性的な形状を持ちます。その美しさと独特の造形は、当時の人々を魅了し、庶民から大名まで広く楽しまれました。

しかし、変化朝顔の系統は時折失われそうになる危機もありましたが、熱心な愛好家たちの努力によって保存され、現代に至るまでその魅力を伝え続けています。現在では、アサガオは夏を代表する植物として、多様な品種が庭や鉢植えで楽しまれています。

一之江抹香亭では、変化朝顔研究会のご協力のもと、江戸時代の品種改良文化を象徴する「変化朝顔」を中心に展示しています。花の色や形の変化をじっくり観察し、その美しさを堪能することができます。朝の光を浴びて鮮やかに咲く花々の姿は、暑い夏の日に清涼感を与え、訪れる人々に癒しをもたらします。

展示では、アサガオの歴史や育て方、楽しみ方についてもご紹介しますので、園芸初心者から愛好家まで幅広くお楽しみいただけます。一之江抹香亭で、江戸の園芸文化と現代まで受け継がれてきたアサガオの世界を、ぜひご堪能ください。

秋の七草と鳴く虫展
(9月中旬~10月上旬)

秋の七草は、奈良時代の歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集に詠んだ2首の歌にちなんでいます。これらの歌では、秋の野に咲く美しい花々を指折り数え、その自然の美しさを称えました。
「秋の野に 咲たる花を 指折りかき数ふれば 七種の花」
「萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(をみなえし)また藤袴 朝貌の花」

この中で「朝貌の花」はアサガオとも言われていますが、現在ではキキョウと解釈され、秋の七草は オミナエシ、ススキ(尾花)、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、ハギ の7種として親しまれています。それぞれの草には、古来からの美しい姿や香りがあり、日本の四季を感じさせる重要な存在です。

  • ハギ(萩): 秋を代表する花で、風に揺れる姿が優美で、万葉集でも多く詠まれています。

  • ススキ(尾花): 秋の風情を象徴する植物で、お月見にも欠かせません。

  • クズ(葛): つる性植物で、花の香りが芳しく、葛粉の原料としても知られます。

  • キキョウ(桔梗): 鮮やかな紫色の花を咲かせ、古くから日本画や和歌に登場します。

  • ナデシコ(撫子): 小さな花がかわいらしく、日本女性の美徳の象徴としても知られています。

  • フジバカマ(藤袴): 甘い香りが特徴で、渡り蝶のアサギマダラが好む植物です。

  • オミナエシ(女郎花): 黄色い小花が密集して咲き、優雅な姿が愛されています。

秋の七草は「鑑賞を楽しむ花」であり、食用の春の七草とは異なる趣を持ちます。一之江抹香亭では、これらの草花を通じて、日本人が古くから感じてきた秋の美しさと文化を体感できます。

また、日本では古くから虫の声を聞くことが「風流」として楽しまれてきました。この文化は平安時代に貴族たちが庭や野に出て、虫の声を聞きながら詩歌を詠んだことに由来します。虫の声は自然の音楽とも言われ、その音色は秋の静けさと調和し、日本人の心を癒やしてきました。

秋に鳴く虫としては、スズムシ、マツムシ、クツワムシ、コオロギ、ウマオイなどが挙げられます。一之江抹香亭では、これらの虫たちを展示し、その鳴き声を間近でお楽しみいただけます。虫たちの奏でる音色に耳を傾けながら、秋の七草の優美な姿を眺めることで、自然と文化が織りなす日本の秋を存分にご堪能いただけます。

ぜひ、一之江抹香亭で、秋の深まりを五感で感じるひとときをお過ごしください。

菊花展
(11月上旬~11月中旬)

菊は、日本を代表する花として古くから愛されてきた園芸植物です。その歴史は飛鳥時代に中国から伝わったことに始まり、平安時代には貴族の間で鑑賞花として楽しまれました。その後、江戸時代になると菊の栽培技術が大きく進歩し、大名から庶民に至るまで広く親しまれるようになりました。特に江戸時代には、品種改良が盛んに行われ、様々な形や色の菊が作られました。また、この時期には菊人形の制作も行われるようになり、菊文化の発展に大きく貢献しました。

一之江抹香亭では、区内の菊愛好家の皆さまの協力を得て、毎年11月に「菊花展」を開催しています。展示では、丹精込めて育てられた多種多様な菊が並び、華やかな秋の風景を楽しむことができます。

菊花展の歴史と魅力

菊花展は日本全国で開催されており、特に有名なものとしては栃木県の「二荒山神社菊花大会」、長崎県の「長崎くんち菊花展」、愛知県の「犬山城下町菊花展」などが挙げられます。これらの展示会では、見事に咲き誇る菊の競演が行われ、多くの人々を魅了しています。

海外でも菊は高く評価されており、中国では「菊花茶」や「菊祭り」として文化に根付いています。また、欧米でも菊は愛されており、フランスやイタリアでは「菊祭り」が秋の恒例行事として定着しています。

日本で菊が好まれる理由

菊は古来より「不老長寿」の象徴とされ、日本の皇室の紋章にも使用される特別な花です。その気品ある姿や、秋の終わりまで咲き続ける強さから、日本人の心に深く根付いています。また、花弁の美しい重なりが生命の豊かさや調和を象徴するとして、縁起の良い花としても知られています。

菊の楽しみ方

菊はその色や形の多様性が魅力です。白、黄色、紫、ピンクなどの花色や、大輪、小菊、懸崖仕立てなどのスタイルを楽しむことができます。また、花弁の一つひとつをじっくり観察すると、その繊細さに感動を覚えることでしょう。一之江抹香亭の菊花展では、これらの美しさを間近で感じながら、日本の伝統的な園芸文化に触れることができます。

ぜひ一之江抹香亭で開催される「菊花展」に足をお運びいただき、丹精込めて育てられた菊の花々をお楽しみください。その優雅で力強い姿が、秋の終わりに心を温めてくれることでしょう。

春の七草展
(12月中旬~1月上旬)

毎年1月7日に食べられる七草粥は、日本の伝統的な行事食であり、新しい年の無病息災を願う風習の一つです。「春の七草」とは、**セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)**の7種類の野草を指します。

春の七草の歴史

七草の習慣は、中国の「七種菜羹(しちしゅさいこう)」という習慣に由来し、日本には平安時代に伝わったとされています。最初に「春の七草」を選定したのは平安時代の僧侶・良源(りょうげん)とされ、「七草粥記」という書物でその作り方や効能が記されています。しかし、当時の七草は現在とは異なっていたようです。
江戸時代に入ると、本草学者の貝原益軒(かいばらえきけん)が著書『大和本草』で現在の七草を紹介したことで、種類が広く定着しました。また、この頃から「七草」という言葉が一般に使われるようになり、七草粥は庶民の間でも親しまれるようになりました。

春の七草の特徴

  • セリ: 水辺に生える香り高い野草で、ビタミンが豊富です。

  • ナズナ: 「ぺんぺん草」として知られ、胃腸を整える効果があります。

  • ゴギョウ: 母子草(ははこぐさ)とも呼ばれ、喉を潤す効果が期待されます。

  • ハコベラ: 栄養価が高く、古くから薬草として利用されています。

  • ホトケノザ: タビラコとも呼ばれ、食べると胃腸の調子を整えると言われます。

  • スズナ(カブ): 消化を助け、疲労回復効果があります。

  • スズシロ(ダイコン): 冷えた体を温め、風邪予防に役立ちます。

七草粥の楽しみ方

七草粥は、1月7日の朝に七草を刻み、白粥に加えて作ります。シンプルながら、七草の香りと風味を楽しむことができ、年末年始で疲れた胃腸を休める効果もあります。また、無病息災を願いながら家族で食べることで、新年の健やかな生活を祈念します。

現在では地方によって七草の種類や作り方が異なることもあり、地域の伝統や文化を感じる機会でもあります。一部の地域では、七草の代わりに地元で採れる野菜や山菜を加えた独自の七草粥を作る風習もあります。

一之江抹香亭での春の七草展

一之江抹香亭では、春の七草を実際にご覧いただき、その特徴や歴史について学べる「春の七草展」を開催しています。展示を通じて、七草粥の由来や効能に触れるとともに、日本の伝統行事を改めて体感していただけます。

ぜひ春の七草展で、日本の伝統文化の魅力と春の訪れを感じるひとときをお楽しみください。

連絡先

イベントや行事への参加をご希望の方は、お手数をおかけいたしますが、電話またはメールにてご連絡ください。

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​一之江抹香亭

いちのえまっこうてい

〒132-0024

東京都江戸川区一之江5-13-16

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開園時間 : 9:00~17:00

 休園日 : 12/29~1/3

 

​ 入園料 : 無料

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